企業情報サイトの多くは「最新の正しい数値」を表示します。それ自体は当然のことで、差にはなりません。本サイトが持つ特色は別のところにあります。ひとつは収録している書類の量と種類、もうひとつは、「いつ、何が、いくら書き換えられたか」を科目単位で追えることです。この2つは独立した話ではなく、後者は前者があって初めて成立します。
1. 収録しているのは有価証券報告書だけではない
本サイトは、金融庁 EDINET に提出された開示書類を書類種別で選り好みせず取り込んでいます。2026年8月12日時点の収録件数は次のとおりです。
| 書類種別 | 収録件数 | 対応する訂正書類 |
|---|---|---|
| 四半期報告書 | 174,625 | 5,045 |
| 有価証券報告書 | 114,359 | 9,222 |
| 大量保有報告書・変更報告書 | 96,230 | 13,929 |
| 臨時報告書 | 49,976 | 2,479 |
| 有価証券届出書 | 48,090 | 14,619 |
| 半期報告書 | 24,814 | 360 |
全32種別の合計は 644,675件、うち訂正書類が 50,278件です。提出企業は 13,138社、最も古い書類は2008年の提出分にさかのぼります。最新の件数は収録書類・更新状況で、種別ごとの内訳とあわせて確認できます(開示書類は日次で取り込んでいます)。
量そのものより大事なのは、種別を絞っていないことです。有報だけを集めると、大量保有報告書に現れる株主の異動も、臨時報告書に現れる出来事も見えません。書類をまたいで同じ企業・同じ人物・同じ保有者に串を通せるのは、全種別を同じ構造で保持しているからです。大株主・大量保有・役員の各集計は、その串刺しの上に載っています。
2. 訂正は「上書き」ではなく「もう一冊の書類」
決算数値は一度確定しても、後から変わることがあります。会計基準(企業会計基準第24号)は、その変わり方を「会計方針の変更」「会計上の見積りの変更」「過去の誤謬の訂正」に整理しており、このうち遡及適用・修正再表示が起きると、すでに公表された過去の数値が書き換わります。
EDINET 上では、それは訂正報告書という独立した書類として提出されます。有価証券報告書(種別120)に対する訂正有価証券報告書(130)、四半期報告書(140)に対する訂正四半期報告書(150)といった具合です。ここが決定的で、訂正報告書は原本の数値を書き換えるのではなく、財務諸表ひとそろいのデータをもう一組持った別の書類です。
本サイトは、この構造をそのまま保持しています。訂正報告書は独立した書類として収録し、原本との親子関係を保ったまま、原本の数値も消しません。結果として、次の2つを同時に手元に置けます。
- 当時いくらと報告されたか(原本 / as-reported)
- いまの正しい数値はいくらか(訂正反映後)
最新スナップショットだけを持つ作りでは、1 は失われます。監査・不正調査・研究のように「当時の開示に基づいて何が判断できたか」を問う用途では、失われた側こそが必要になります。
3. 何がいくら変わったのかを、科目の粒度で
XBRL では、1つの数値(ファクト)は単独では意味を持たず、概念(勘定科目)×コンテキスト(期間・連結/単体・セグメント等の切り口)×単位という座標とセットで初めて意味を持ちます。原本と訂正報告書の双方をこの座標で保持しているので、両者の突き合わせは「PDFを目で見比べる」作業ではなく、同じ座標にある値の比較になります。
実例として、株式会社ジャパンディスプレイが2020年に第13〜17期をまとめて訂正した件を見ます。第14期(2016年度)の主要数値は次のように変わりました。
| 科目 | 原本 | 訂正後 | 差分 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 813,861 | 801,779 | −12,082 |
| 純資産 | 365,249 | 352,534 | −12,715 |
| 営業利益 | 16,710 | 10,921 | −5,789 |
| 経常利益 | −12,934 | −18,254 | −5,320 |
| 当期純利益 | −31,361 | −41,599 | −10,238 |
(単位: 百万円。原本 S1007SQZ と訂正報告書 S100IFJW の比較)
会計的に読めば、資産・純資産が過大に、損失が過少に見えていたものが、訂正で実態に引き戻されたということです。そして、この年度で値が変わった項目は主要5科目にとどまらず、364項目あります。セグメントや内訳(コンテキストに切り口が付いたファクト)まで含めて機械的に突き合わせているためで、この一覧は訂正報告書による訂正で企業を指定すれば、全年度ぶんを差額の大きい順に読めます。2書類を直接指定した比較は書類間の差分から行えます。
4. 訂正報告書が出ないまま直る数値もある
過去の数値が書き換わる経路は、訂正報告書だけではありません。有価証券報告書は必ず前期との比較で作られるため、ある年度の「当期」の値は、翌年度の報告書には「前期」の値として再び登場します。過去を修正再表示すると、訂正報告書を伴わなくても、この前期欄の数値が過去の公表値と食い違うことがあります。
本サイトはこの食い違いを、年度をまたいだ突合で洗い出しています(サイレント修正)。突合は勘定科目・期間種別・連結/単体を揃えて行い、会計基準の混在による誤検知を避けています。
ただし、ここで拾われるものが即「不正」だと言うことはできません。実際に多いのは、「その他の流動負債」「その他の営業外費用」といった区分の組替で、これは正当な表示変更です。そのため各行に組替かどうかの印を付け、除いた状態でも見られるようにしています。ジャパンディスプレイの場合、全年度で117件が拾われ、うち35件は組替として仕分けられます(2026年8月12日時点)。この機能はスクリーニングであり、判断の材料であって結論ではありません。
5. 既定は訂正反映後、必要なら原本に切り替える
日常的に必要なのは「いまの正しい数値」なので、財務データは訂正反映後を既定にしています。そのうえで、財務データの画面には「訂正反映後 / 原本」の切り替えを置いてあり、当時の報告値をそのまま読むこともできます。どの数値がどの提出書類に基づくかは各ページの出典表示から辿れ、EDINET の原本 PDF まで一次確認できます。
訂正そのものの傾向は訂正に関する統計情報に、直近の提出は最新訂正書類一覧にまとまっています。
6. できないこと・注意していただきたいこと
- 部分訂正: 訂正報告書が変更箇所のみを含む形式で提出されている場合、差分は直接的ですが、「差分に出ていない=変更が無かった」とは断定できません。
- 数値を伴わない訂正: 大株主の状況やガバナンス記述、誤字の訂正は数値のファクトに現れないため、科目単位の差分では空になります。
- 古い年度の様式: 2008〜2013年ごろの旧形式には単体のみが XBRL 化されている年があり、連結の遡及追跡には限界があります。
- 比較の前提: 会計基準(日本基準・IFRS・米国基準)や連結範囲が異なる企業どうしの数値は、そのまま比較できるとは限りません。
- 本サイトの数値は提出書類からの機械的な抽出・正規化を経ています。重要な判断の前には、必ず EDINET の原本をご確認ください。データの出所と加工の方法は運営情報・データの出所に記載しています。
まとめ
- 収録は全32種別・644,675件(2026年8月12日時点)。種別を絞らないことが、書類をまたいだ横断の前提になっています。
- 訂正報告書は原本を上書きせず、独立した書類として保持しています。だから原本と訂正後を両方出せます。
- 変化は主要指標だけでなく、科目・期・連結区分・セグメントの粒度で突き合わせています。
- 訂正報告書を伴わない遡及も、前期比較値との突合で拾います。ただし正当な組替を含むスクリーニングです。